優先順位付けのフレームワーク10 タスク整理やプロジェクト管理に

多忙なとき、心配事があるとき、頭をスッキリさせたいとき。追われているタスクに優先順位をつけて段取りよく進めることで、状況が好転します。

また、複数のプロジェクトを並行して進行している時、どのプロジェクトを優先するかの判断が迫られることもあるでしょう。場合によってはリソースの集中や撤退が検討されます。

このようにさまざまなビジネスシーンで、精度高く優先順位をつけることが求められます。

こちらの記事ではケース別に活用できるよう、10の優先順位付けフレームワークをまとめました。

優先順位付けに利用できる10のフレームワーク

この記事では以下の10のフレームワークについて解説します。

フレームワーク活用ケース概要
アイゼンハワー・マトリクスタスク整理タスクを緊急度と重要度に分けて整理する。
Will Can Mustキャリア形成やりたいこと・できること・やるべきことを書き出す。
SWOT分析自社分析自社の強み・弱み、自社を取り巻く外的な機会・脅威についてまとめる。
MoSCoW要件管理要件を必要・あると良い・できれば欲しい・必要ないに分ける。
Value vs Effortマトリクス労力対効果の把握プロジェクトに対し労力と効果をプロットする。
コスト リスク リターンリスク評価コストとリターンに加え、リスクの大きさを考慮して図式化する。
ICEスコアリングモデル優先度の数値化インパクト、成功確度、実行の容易さをそれぞれスコアリングする。
RICEプロダクトマネジメントインパクト、成功確度、容易さに加え、ユーザーへの影響度をスコアリングする。
Sales & ROAS広告費用対効果売上とROASを広告の事業貢献度として評価する。
KPIツリー数値目標化最重要目標からブレイクダウンし、各施策の目標数値に定める。

それぞれ見ていきましょう。

アイゼンハワー・マトリクス

名前を見ると少し小難しそうといいますか、ゴツい感じがするかもしれませんが、内容は至ってシンプル。

タスクを「緊急度」「重要度」で整理するものです。

以下の4つにタスクを整理していきます。

・第1領域:緊急かつ重要なもの
・第2領域:緊急ではないが重要なもの
・第3領域:緊急だが重要でないもの
・第4領域:緊急でも重要でもないもの

図のように、4つの象限に分けてそれぞれ書き出してみるのがおすすめです。

第1領域は案外迷わない、悩ましいのは第2・3領域

第1領域は締切が決まっていて、外せないタスクが含まれます。案外最も簡単に穴埋めできるのが第1領域です。

問題になってくるのは、第2・3領域。線引きが難しく感じる方もいらっしゃるでしょう。

まず、「自分でなければできないか」「自分以外でもできることか」で分けるのがポイントです。自分でなければできないことは、ひとまず重要と言えますので、第2領域として整理します。

第2領域を箇条書きで出し切ったら、それぞれ目安の期日を決めておくのがポイント。というのも、第2領域にまとめたタスクは、必ずいつか第1領域にうつってきます。前もって動くに越したことはありませんので、それぞれ期日を決めて段取りを練っておくと良いでしょう。

該当のタスクを他の人に頼む選択肢も考えられるのであれば、第3領域として整理します。第3領域は緊急だけれども、自分でなくて良いもの。ここには、突発的なタスクなども含まれるでしょう。自分でなくても対応できるものであれば、あらかじめ他の方に依頼するのが得策です。

意外と重要な第4領域

第4領域は、重要でも緊急でもないものです。こう聞くと、「じゃあ、やらなければいいじゃん」となるわけですが、実際に書き出してみると、忙しい人であればあるほど第4領域に何を入れていいかわからなくなります。

無駄話なんてする暇もないし、これ以上休憩を削ったら体にこたえそうだし、といったイメージで第4領域には何を入れて良いかわからない方もいらっしゃいます。

ストイックに予定をしきつめることが目的ではないので、適度に休憩は第1領域と心得ておくのが良いでしょう。また、第1〜3領域にあるタスクを全てこなすのが難しければ、一部をやらないと決めて第4領域として整理するのも大切な選択です。

Will Can Must

次に紹介のフレームワークは、Will Can Must

Will Can Mustはリクルートが提唱したキャリア形成のフレームワークで、Will(したいこと)、Can(できること)、Must(やるべきこと)についてそれぞれ書き出して整理するものです。

例えば、

<Will(やりたいこと)>
・新規事業に携わりたい
・セミナーをやりたい
・一軒家を建てたい
・休みは家族と過ごしたい

<Can(できること)>
・個人&法人営業
・論理的思考
・チームマネジメント
・ドキュメント整理

<Must(やるべきこと)>
・テレアポ&商談
・プレゼン資料の作成
・部下の育成
・平日の家事当番

のようにそれぞれ書き出していきます。

重なる部分が「理想の自分」

Will Can Mustが重なっている部分が理想の自分であり、職場に満足して、高いパフォーマンスが出せる状態とされます。

上の例で言えば、

「商談能力と部下の育成の成果が評価され、新規事業を任されるようになった。論理的思考と得意なドキュメント作成能力を発揮して、セミナーを集客の一部として企画して実行した。1人で動くのではなく、チームで分担しながら進めた。結果として部下の成長に繋がった。平日も帰ってから家事をこなし、休日は家族とゆっくり過ごせている。」

となれば、Will Can Mustが広範囲で重なっていると思います。字面からも充実している感が伝わってくるようです。

Will Can Mustは必ずしも一致しません。Will(やりたいこと)とMust(やるべきこと)がかけ離れていくと、「やりたいことができない」といった気持ちが鬱積することとなります。Can(できること)とMust(やるべきこと)が重ならなければ、「やらなければいけないのにできない」といったストレスが発生します。

バランスが非常に重要で、もし先々において耐えかねるということであれば、周囲と調整していくのも大切なことでしょう。

SWOT分析

SWOT分析は割と知名度がありますので、知っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

自社や自サービスを対象として、強み・弱み・機会・脅威をまとめるフレームワークです。

・Storength(強み):自社の優れたところ、今後の成長にプラスに働く性質
・Weakness(弱み):自社の劣っているところ、今後の成長にマイナスに働く性質
・Opportunities(機会):コントロールはできないが、自社にとって追い風の事柄
・Threats(脅威):コントロールできない、自社にとって向かい風となる事柄

それぞれの頭文字をとって「SWOT」分析です。

一般的にこのフレームワークは法人やサービスに適用されます。しかしながら、自分個人に当てはめて考えてみるのも面白いです。

自分の強みはなんなのか、弱みはなんなのか。自分を取り巻く環境において追い風になることは、反対に向かい風になることは何か。

このように置き換えて整理すると、自身のキャリア視点での置かれている状況が客観的に見えてきて、自己分析・キャリアプランに役立ちます。

MoSCoW

MoSCoW(モスカウ)は、要件や顧客要望を整理するときに使うフレームワークです。

みなさんは、上司やチーム、お客様といった仕事関係者とコミュニケーションをとる際に何に注意しますでしょうか。関係性を良くするために、いろんなことを考えると思います。

その中の重要な一つに「要望を理解する」というのがあげられるかと思います。ただ、相手に要望をたくさん出してもらったとしても全て実行できるとは限りません。チームで要望だけ出し合っても、それだけでは実行に移せません。

そのような場面でMoSCoWは活用されます。

MoSCoWとは、要望・要件を4段階に分けるフレームワークです。

・Must Have(必須):それなしでははじまない、欠かせない要件
・Shoud Have(あると良い):なくても致命的ではないが、あると良い要件
・Could Have(できれば):なくても良いが、あれば便利な機能要件
・Won’t Have(やらない):ほとんどの場合必要なく、コストをかけてまでやらない要件

それぞれの頭文字をとって、MoSCoWとなります。

必要な要件を漏らさないようにする、またコストをかけてまで実装するかを検討する

望む制作物を完成させる上で、もっとも重要なことはMustを漏らさないことです。できるかぎりプロジェクトの初期段階でこのMustを明らかにしておくと良いでしょう。

Must以外の要件を整理する上で重要な視点はコストです。予算が決まっているのであれば、予算内で実行できるものである必要があります。

実際のプロジェクトにおいてはMustと一部のShouldを実装段階でローンチし、残りのShouldとCouldの要件は運用フェーズで段階的に実装されるようなことが多いのではないでしょうか。Won’t Haveも「何をやらないか」を決めることでリソースの温存につながるため重要な領域です。

Value vs Effortマトリクス

Value vs Effortマトリクスとは、Value(価値)とEffort(労力)を軸に取りタスク、プロジェクトを整理するフレームワークです。

職場では度々、「大変なわりにやるメリットがあるかわからない」といったことが起こるのではないでしょうか。意識、無意識に関わらず労力というものを気にするのは当然で、それを考えなければ頑張った割に成果がなかったという最悪の事態を招くかもしれません。

・Value()×Effort(低):簡単に実行できて大きな成果
→最優先
・Value()×Effort():大型案件
→慎重に進行し、状況が変化した場合には省力化も検討する
・Value(低)×Effort(低):細かいタスク
→場合によっては後回し
・Value(低)×Effort(低):徒労
→取り組まない

とそれぞれ定義されます。簡単で成果が大のものから優先的に進めるのが重要であり、価値が低い割に労力が高いものは、徒労と判断して切り上げるのも賢い選択です。

価値は低いけど、労力も低いタスク、プロジェクトをどう処理するか

Value(低)×Effort(低)のタスクをどう処理するかで、仕事の出来不出来が決まってくる部部分があると思われます。特に個人、少人数であればこの領域の処理度合いでチームの評価は変わってくるでしょう。

細かいタスクを後回しにするか、合間合間で進めてしまうか、はたまた例外的に先にやってしまうか。機会が定期的に回ってくるとは限らない現実の環境において、ここは選択のしどころになります。

コスト リスク リターン

コスト リスク リターンのフレームワークはValue vs Effortマトリクスにリスクの概念を織り交ぜたものと考えるとわかりやすいでしょう。

プロジェクトをスタートする前にある程度、コストとリターンを想定しておくのが通常であり、予定通り進むのであればチーム内の情報共有、関係者への進捗報告なども最低限で済むようになってきます。

しかし、ビジネスには不確実性がつきものです。プロジェクトを始めてみたけれども、想定と変わってきてしまっているといったことが起こりえます。

また、(気持ち的にはそう思っておくのは個人的には大事だと思いますが、)絶対に成功する前提で全てを決めてしまうのも無理があると言いますか、選択肢が狭まります。

ある程度不確実性があるけれども、成功したら大きなリターンがある。こういったことにも取り組んでいかなければならないシーンもあるでしょう。

不確実性を可視化しておく

成功角度が100%ではない、状況の変化に敏感に意思決定したい。特に影響度が大きいプロジェクトを複数動かすのであれば重要な視点です。

このような場合に「コスト リスク リターン」のフレームワークは使われます。

実態としては、リソースのコントロールや撤退判断といった上流の意思決定において活用されるフレームワークと言えるでしょう。

ICEスコアリングモデル

優先順位を点数化できれば、あとはスコアの高い順に進めていけば良いだけ。スコアリングの一つのモデルとしてICEスコアリングモデルがあります。

ICEは以下の単語の頭文字。

・Impact:どれだけの効果をもたらすか
・Confidence:どれだけの成功確率か
・Ease:どれだけ容易であるか

Impactだけでスコアリングしない、ということにこのフレームワークの意義があります。

Impact、Confidence、Easeをどのように考えるか

impactは「施策がどの程度目標に対してプラスにはたらくか」に置き換えられます。目標は売上や、コスト削減といったプロジェクトの目的の大項目に当たります。

Impactだけでスコアリングしても、優先順位付けとしてはシンプルに機能しそうです。しかしながら、ビジネスの場面では重要な2つの視点がかけており、Impactだけで判断することは実際は行われないでしょう。その重要な視点というのが、Confidence(成功確率)、Ease(実行の容易さ)です。

それぞれの項目をどのように点数化するか

それぞれの項目をどのように数値化していくかというのが重要なポイントですが、ここには決まった答えはありません。プロダクトマネージャーにとって悩ましいところでもあり、手腕の見せ所でもあります。

各指標の定義について、例えば以下のような決め方があるでしょう。

Impact
1:売上に全く影響がない
10:売上目標に対し50%のプラス

Confidence
1:全く予測できない
10:過去の実績から成功の確証あり

Ease
1:誰がやっても1日以内に完了
10:専門家が半年かけて完了

このようにして、それぞれの施策を点数化を定義し、各施策を評価していきます。

RICE

RICEは、プロダクトマネジメントに使用されるフレームワークです。ICEスコアリングモデルに対しReach(どれだけのユーザーに影響するか)の視点が加わっていると考えるとわかりやすいと思います。また、Eの定義としてはEase(容易さ)ではなくEffort(工数)と定義されます。

Webサービスのプロダクトマネジメントにジャストフィット

RICEの特徴はReach(どれだけのユーザーに影響するか)を評価軸に置くことです。

どのようなプロジェクトにもいえることですが、制作物にはユーザー、利用者が存在します。その人数規模をあらかじめ指標化しておくことがRICE活用のポイントになります。

とりわけWebサービスのプロダクト開発を考えてみると、その開発はどれだけのユーザーにとって関係のある話かといったことは議論の土台となる重要事項です。各施策ごとにReachの数値をまとめておくのは意義深いと言えます。

Sales & ROAS

Sales & ROASは広告の事業への貢献度を評価し、予算配分を含めた広告改善に役立つフレームワークです。

広告はROAS、もしくはCPAで評価するのが一般的でしょう。

マーケット開拓にフォワードの姿勢をとるのであれば、売上を指標として加えるSales & ROASの評価が活きてきます。

複数の媒体を運用しており、全体感と予算配分を見るのに適している

以下に架空の例として、Google広告、Yahoo!広告、Meta広告、LINE広告を並行して運営している場合のまとめ方を示します。

上記の図で示す例で言うと、Google広告はROASが平均以下です。ただ、売上貢献度を見ると、2位のYahoo!に対し70万円差をつけています。売上貢献度が高いため、必ずしも問題というわけではありません。

Yahoo!について言えば、検索広告のROASが非常に高く、予算を増加させて仮にもう少しROASが下がったとしても、より売上を伸ばしていきたい状況と捉えることができます。一方で、ディスプレイ広告は売上もROASも低く、施策を見直す必要があるでしょう。

MetaとLINEは、売上は違いますがどちらもROASは高いと考えて良いので、予算増加を検討するのも良いといった方向性になります。

このように、予算の振り分けを柔軟に考えつつ売上最大化を目指すシーンに適しています。

KPIツリー

KPIツリーとは、最重要目標であるKGIからブレイクダウンして、ツリー状に各施策のKPIを設計するフレームワークです。

ところで、KPIKSFKGIという言葉をご存知でしょうか。ごっちゃになりやすい単語ですので、以下に簡単にまとめます。

・KGI(Key Goal indicator):最重要目標達成指標
・KSF(Key Success Factor):重要成功要因
・KPI(Key Performance Indicator):重要業績評価指標

ポイントはKPIを全て達成すれば、KGIも達成できるよう矛盾なく設定することです。言葉でいうのは簡単ですが、論理的に組み立てなければ「各KPIは達成したのに望ましい結果が得られなかった」といったことになりかねませんので注意が必要です。

KSFを盛り込む意味

KPIツリーは、各施策の数値目標が定まっており、KGIの達成に矛盾なく繋がっていれば成立します。ここにKSFを盛り込む意味はあるのでしょうか。

上で登場したKPIツリーの図において、KSFをなくすと各施策を何のためにやるのかが分かりづらくなるでしょう。

KSFはKGIとKPIのつながりをチームで共有する際に役立ちます。

フレームワークは思考の整理と集団の合意形成に役立っている

10の優先順位付けフレームワークを紹介しましたが、これらはフレームワークそのものに価値があるかというとそうではなくて、整理された情報からどのような選択をするかが重要になってきます。

ただ、ごちゃごちゃ思考の中での決断はあとあと間違えることも多く、漏れのない状態での意思決定を行う上で情報整理は有効です。

また、チームで物事を進める際、意見の衝突や不和はたびたび起こります。そのような時に、フレームワークというある種の共通言語を持つことで、互いに状況を整理し納得のいく着地点にいきつきやすくなります。

使い所をおさえて、自身の業務に役立ててみてください。

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